史書の記載によると、中国の切り紙細工が最も早く現れたのは1500年前の南北朝時代（420年―589年）のことである。
　中国の農村では人々は皆、祝祭日になると切り紙を木戸や窓に貼りつけて飾ることを好む。それは“窓花”と呼ばれ、もしその切り紙を旧正月を過ごす時に供えるお菓子の上に貼れば、“お菓子の花”と呼ばれる。また切り紙を靴の上に刺繍する模様として用いればそれは“靴花”と呼ばれる。中国の民間に伝わる切り紙細工は叙情、愛情、お祝い事および風俗と深い関わりのある民間芸術であり、切り紙が表現する内容は常に人々の実際の暮らしと緊密に結びついている。その昔、中国の農村では交通が不便であったため、各地の切り紙細工は往々にしてその地ならではの特色を形成していった。例えば「豊作の年に龍が舞う」は非常に細かいタッチが特徴で、南方、浙江省の楽清でしか見られない。十二支納福図、古き良き北京の風情シリーズ農家楽は彩色の施された切り紙であり、その多くは河北省の蔚県に集中している。山村の人に代表される比較的飾り気のなく、豪放な単色の切り紙は、そのほとんどが北部の陝西省、甘粛省辺りで伝えられている。?蝶と戯れる猫?のような切り紙は繊細かつ秀麗で、その多くが黄河の中流下流地域、例えば山東省あたりに分布している。
　切り紙細工は母親たちが日常生活と労働の中、はさみ1つで創造した民間芸術であるため、“お母さんの芸術”と呼び親しまれている。そんな切り紙細工には、はさみやナイフを使うほかに紙を直接手でちぎるという方法もあり、はさみなどを使った切り紙細工よりも更に豪快で素朴である。やがて都市部の画家、文人たちも切り紙細工に手を出し始めるにつれ、今では現代版ともいうべき新しい切り紙細工まで出現した。これら現代版の作品には?動物、潮汕郷情?、?大砂漠の風情などがあり、その造形、色彩や手法においてより一層現代芸術の風格に近づいている。